死神と生命力と

11日に皆で黙祷しながら、ふとあの日のことを思い出したので忘れないうちに書いておこうと思った。
 
都心から歩いて帰る、国道いっぱいに広がった人々の影。
あの光景は忘れられない。
 
夕暮れ時、浮かんでは消えていく不安を繰り返しながら、とにかく一歩一歩と家に向かったあの時間。
 
歩きながらずっと感じていたのは、暗い路地裏から「黒い影」がじっとこっちを見ている気がしていたこと。
まるで「千と千尋の神隠し」に出てきた「カオナシ」のように、ただ静かにこちらを見ていた。
真っ黒で、クビがなく、胸のあたりに目があるようなそんな存在。 なんとなく直視も出来ず、「あぁこいつは死神だ。」と直感で感じていた。 「自分の中の死神だ。」と。
人間、不安と死が近くにきてもおかしくない時、こんなものが見えるのかと思った。

※脳が不安を変換・可視化したものととらえている。オカルト的な意味で書いている訳では無いのであしからず。
 
そんな自分の中の弱い存在を感じながらしばらくすると、なぜか「よっしゃ!生きるぞ!」という思いが溢れてきた。
追い詰められて逆に生命力が湧き出たようだ。 人間というものは不思議だ。
 
軍隊アリが通ったあとのような、スッカラカンになったコンビニに入っては出て、やっと弁当を手に入れると、「生きるために俺は食う!食うぞ!」とガツガツと国道を闊歩しながら弁当をむさぼり食った。


歩いて都心部を抜けて景色も変わり、足のだるさを感じつつも、非日常を新鮮な気持ちで体験することが出来た夜。
いつしか死神の姿も消えていた。
 
あの日から5年。
 
ただなんとなくまた日々を過ごしている自分。
風呂に入っている時や、眠りにつく時に揺れない事のありがたみを忘れた自分。
無事に生きている事の感謝も忘れ始めた自分。
 
まぁ、無理に反省してもしょうがないのだけれど。
 
せっかく生きているのだから、生命力が湧き出たあの日の感覚を思い出して、 またガツガツとむさぼり食うように生きたいものだ。